14章 王位継承権

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アレフは返事をしながらソファに腰掛ける。 ザイードはぽつりぽつりと口を動かした。 「……会う度に小さくなっていく気がする…」 その言葉にアレフはふっと遠い目で弱く笑みを浮かべた。 アレフも静かに答える。 「それが──…“老い”と言うもので御座います」 「…老い…か…」 ザイードはその言葉を繰り返した。 「王は何か言ったか……」 「ええ…」 「………」 「ザイードを頼むと……」 「………」 アレフは王の言った言葉を思い出しながら無言のザイードに口を開いた。 「もう80を過ぎました…ザイード様は陛下が歳をいってから授かったお子。──…可愛くて仕方ありますまい…」 ザイードはその言葉にふと口を歪めた。 「その可愛い我が子に国を背負えと言う──…本当に可愛いのかは疑問だ」 「仕方ありませんな…」 「………」 「我が子も可愛ければそれと同じ様に国も民も愛しい──」 「………」 「御自分と同じ様にそれを愛しむザイード様に託そうとされているまででございます」 「───」 ザイードは瞬きもせずに真っ直ぐに上を見つめていた。 少し間を置いてザイードは呟く。 「何故、兄ではいかんのだ──」 アレフは小さく溜め息を溢した。
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