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「王位継承権は放棄した──…なのに何故、サルジュは俺を疎ましがる?」
「……それは」
「………」
「ザイード様が民に支持されているからに他なりませんな──…」
「………」
「どんなに富裕層の支持を集めたとして、民衆の数には敵いますまい──…暴動化してしまえばそれを抑えることはサルジュ王子には無理な話──…」
「その民を抑えるには、その民達が崇めるザイード様を完全に失脚させること──…」
「………」
「王位継承権の放棄ごときでは何時でも国の上に返り咲くことができる──…」
「………」
「ハダバを襲わせたのは…ザイード様への民衆の期待を失意させること。これが一番の目的でしょう」
「………なるほど…そうまでして俺が怖いか…」
「………」
「王位継承権を取り戻して王座の争いに返り咲く気持ちは俺には微塵もないのにな」
「───…」
呟いたザイードの言葉にアレフは、ははっと思わず笑いを溢した。
「──…何が可笑しい」
「いえ──…返り咲く気がまったくない……と、まだ言いきれますかな…と」
「………」
意味深に口を開くアレフにザイードは顔だけを向けた。
「マナミ様が二日後には日本に帰国致します──」
「───」
一瞬でザイードの目が見開いた。
ザイードは咄嗟に身体を起こし、そう口にしたアレフを見る。
「……二日後──…っ何故そんな急にっ…」
ザイードの顔が歪んだ。ふいに告げられた愛美の帰国。ザイードの唇が震え何かが胸を締め付けた。
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