14章 王位継承権

19/29
前へ
/29ページ
次へ
・ 戸惑いを隠すこともできず表情に露にしたザイードをアレフは静かに見つめた。 ザイードは驚くほど震える自分の手のひらを見つめる── 国のことよりも 王位継承権のことよりも 兄の自分への嫉妬に対してよりも 自分の胸を荒立てる── 「二日後──…っ」 ザイードは悲壮を浮かべて呟いた。 早すぎる── まだどうしていいかも答えが出ていない… 自分を拒否する愛美を── 日本へ帰ることを望む愛美を── 自分の気持ちを優先するべきか 愛美の気持ちを優先するべきか…… その間でずっともがいていた── 「日本になど帰られたら──…っ…二度と取り戻せないっ…」 苦しい想いが呟きとなって口を突いて漏れた。 「……ザイード様はマナミ様をどうされたかったのでございますか──」 「──…」 アレフは急に問い質した。 「傍に置かれていたマナミ様を急に突き放された…それでもマナミ様を目の届く位置に置いておきたいのは何故で」
/29ページ

最初のコメントを投稿しよう!

190人が本棚に入れています
本棚に追加