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戸惑いを隠すこともできず表情に露にしたザイードをアレフは静かに見つめた。
ザイードは驚くほど震える自分の手のひらを見つめる──
国のことよりも
王位継承権のことよりも
兄の自分への嫉妬に対してよりも
自分の胸を荒立てる──
「二日後──…っ」
ザイードは悲壮を浮かべて呟いた。
早すぎる──
まだどうしていいかも答えが出ていない…
自分を拒否する愛美を──
日本へ帰ることを望む愛美を──
自分の気持ちを優先するべきか
愛美の気持ちを優先するべきか……
その間でずっともがいていた──
「日本になど帰られたら──…っ…二度と取り戻せないっ…」
苦しい想いが呟きとなって口を突いて漏れた。
「……ザイード様はマナミ様をどうされたかったのでございますか──」
「──…」
アレフは急に問い質した。
「傍に置かれていたマナミ様を急に突き放された…それでもマナミ様を目の届く位置に置いておきたいのは何故で」
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