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「………」
ザイードは問われて自分の震える手を見つめたままだ。
目の届く位置に……
目の届く位置に置いておきたいわけではない──
できればずっとこの腕の中に…
四六時中この腕に抱き締めて片時も離さずに置いておきたい──
手放してやっとその愛しさがわかった。
離れている辛さが募り、失うことの怖さを思い知った──…っ
大切にしようと想ったからこそ愛美の望む幸せをと今自分の行動すべきことに深く思い悩んでいる……
「俺はマナミが大事だ──…っ…あれに幸せになってほしい…」
ザイードは震える唇でそう口にする。
「ならば……日本に帰して差し上げましょう…」
「……っ…」
アレフの言葉にザイードの震える手がピクリとなった。
「日本に帰して日本で幸せになって頂くことを望めば宜しいのでは…──」
「──……」
ザイードは黙ったまま奥歯を噛み締める。今だ震える手を見つめるザイードの瞳は次第に歪みを見せはじめていた。
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