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アレフは構わず続けた。
「マナミ様は日本人でございます──…日本人はあまりにも我々と文化も考え方も違いすぎる…ここに居てもマナミ様は幸せにはなれるはずも御座いません……」
「───…っ」
「マナミ様は日本に帰り、日本人の男性と結ばれたほうが何より幸せにござ…」
「──っ…もういいっ…」
ザイードは鋭くアレフを睨み付けた。
「それ以上口を開くな!」
「───…」
アレフは叫んだまま頭を抱えて踞るザイードを静かに見つめた。
「…っ…下がれっ──…もう話は何もないっ…」
悲痛な声音が絞り出されて震える。
顔を塞いだザイードの唇が歪んでいる──
アレフは言われるままに背を向けて扉に手を掛けた。
アレフはそのまま静かに溜め息を吐く──
「……果たして…マナミ様にとって日本に帰ることがマナミ様の幸せに繋がるのでしょうかな……」
「………」
頭を抱えたザイードの背中がぴくっと動く。アレフはその言葉を残して居室から出ていった。
ザイードは静かになった部屋で唇を噛んだまま顔を歪める。
「……っ…ならばどうしろという──っ…」
自分では愛美を怯えさせるだけだ──
幸せになどとうていできない……
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