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高い位置にそびえ、平地を見下ろす古城──
下から見上げれば月と同じ高さにあるようにも見える。
そのてっぺんを望むはなに故に──
国の平和
民の幸せ──
上を望むのは……
どちらも欠かすことは出来ないからだ──
◇◇◇
「ん……」
ゆっくりと横に休めた躰が波を打った。
立て続けに大きく揺れて隣に気配を感じる──
愛美は閉じていた瞼をおもむろに開いていた。
「──……」
驚いて愛美は目を見開く。
「あ、すまない。起こしたか──」
愛美が眠るベットに潜り、アサドは普通にそう返していた。
「な、なんでここにっ…」
横たわっていた半身を起こして愛美はシーツを被ろうとするアサドに頭上から問い掛ける。
アサドはそんな愛美を見上げた。
「なぜかって? 知りたいか?」
目を見開いたままの愛美を下から見上げ、アサドは長い枕の端に頭をあずけながら笑って指を一本立てた。
「一つ──…これは俺のベットだから」
「───」
「二つ──…ベットは寝る為に使う物だから」
「………」
「三つ──…自分のベットに寝るのは当たり前だから」
「……っ…」
「答えはどれだと思う?」
突然三択で問われ、愛美は思わず唾を飲み込む。
「どれだ?」
「こ、…これ…?…かな」
愛美は三本指を立てて答えていた。
「お、似た答えの中からよく正解を当てたな」
アサドは何気に誉めて笑顔を向けると頭を撫でた。
「……てことだ…」
そう言ってしっかり寝る体制に入ったアサドに愛美は焦っていた。
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