14章 王位継承権

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・ 愛美は今までの日々を振り返りアサドの腕に抱かれ何となく笑みを浮かべた。 「そうか……もう最後なんだ……」 「……?」 日本語でポツリと呟いた愛美をアサドはふと見下ろした。 名残惜しくもあるけどもう帰るんだと思うと何処かしらすっきりとした感情が沸いてくる。 日本に帰ったら── ここであった全てのことが想い出になるんだ…… あの人のことも… 全てが想い出に── それはすごく切なくて、そしてとても淋しくもあるけれど── こんな恋はもう二度とデキナイ── そんな恋ができただけでもすごいことなんだ…… そう思い始めたら、辛い気持ちも和らいで晴々とした感情すら沸いてくる。 持って帰ろう── ここであった出来事も あの人を好きになった気持ちも全部、 日本に持って帰ろう── 愛美の唇はゆっくりと口角を上げて微笑む。 アサドに抱き締められていた愛美の腕はゆっくりとアサドの背中に回っていった。 「───」 アサドは少し驚いた顔を愛美に向ける。 そんなアサドを見上げ愛美は無邪気に笑い返していた。
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