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「前にお約束していた日本に帰国するための航空券でございます──」
「──…」
愛美は思い出したように口を開きかける。
封筒を開けてアレフは中に入っていたチケット二枚を取り出し扇状に広げて愛美に見せた。
「“一旦、帰国”その為の往復のチケットでございます──」
「……っ…」
「もちろん無理に二枚を使う必要はございません──…」
「………」
「マナミ様のご意志ひとつ。帰りのチケットはお持ち頂いていて結構でございます……」
そうゆっくり語り、アレフは戸惑う愛美に微笑んで返す。
「ありがと……」
返って手を煩わせてしまった──
どうせ帰るなら…
また戻ってくる決心がないのなら──
一旦帰国するなんて言わなければよかった……
愛美はソファの前のテーブルに置かれたチケットを手に取り見つめた。
そんな愛美にアレフは小さく呟いた。
「帰ったらもうお会いできない確率の方が高そうですな……」
「………」
チケットを手にした愛美の表情を見てアレフはため息を吐く。
望みは愛美自身の意思に託した。
そう思いながらアレフは口にする。
「ザイード様が……さぞお嘆きになれるでしょうな…」
「──…」
愛美はチケットから顔を上げた。
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