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「ふ…また泣いたか」
「…ごめんなさい」
ソファの上で涙を拭う愛美を笑いながらアサドは声を掛けて横に座った。
「アレフから赤いリュックを預かってる。帰る準備っていってもあれ一つしか持ち物はないだろう? あとは帰国する時に着る物を買い揃えるくらいだな」
愛美は頷くと手にした航空チケットを眺めた。
アサドはその券を覗き込む。
「せっかく取ってくれたから無くさないようにしなきゃ…」
「いざとなったら空軍機がある──…気にするな」
「…くうっ!?……」
愛美の頭を撫でてアサドは言葉を詰まらせた愛美を笑った。
「夕食は?」
「レストランで沢山食べたから夜はもう……」
語尾を濁して食事を断る愛美にアサドも頷いて返す。
「なら部屋でゆっくり休め、俺はまた今から出掛けてくるから──」
アサドは優しく微笑み掛けるとソファから腰を上げて居間を後にした。
愛美はその後ろ姿に手を振り返して見送る。
そしてまたチケットを見つめた。
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