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私がこの地に来て、幾年(いくとせ)が過ぎたことだろう。 もう随分と長いこと、根を伸ばしてしまった。 人々が手を入れて、老いぼれたはずだったこの私をこの地に植えた。 何度も私は、そうして若返っては年老いてを繰り返してきたものだ。 はじめは、たった一人だった。 それが今やどれほどの数がいるのか見当もつかない。 私は、私が辿った生の中でしか、物事を見てこられなかったからだ。 もうどれだけの時間を過ごしたかなどというのは考えるだけ無駄なこと。 今や、辺りは静かなものだ。 いつかの時代に、まだこの地に来る以前に。 私は気が遠くなるほどの年月をかけて、多くの場所を旅してきた。 こんな風に過ごすことに、何の意味があるのだろうか。 そんなことを考えたことも確かにあった。 いつの頃にそう思って、いつの頃に考えることを已(や)めたのか。 それすらも、覚えてなどいない。 私のところへ、色んな人がやってきたものだ。 そんな人間の様を、ただひたすらに声を掛けることすら叶わぬままに。 あぁ、彼らが来たのはいつだっただろう。
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