かき揚げ丼 フロンティア

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「気を付けてください! 」  周囲の怒声と視線も寒い。 「ごめんなさい」  その時、地上を映すモニターに、光が増えた。  レモン色で、地上からここまで、連続して登ってくる。  それも、幾筋も。 「対空砲火を受けています! 」  オペレーターの一人の声を聞いた時、手が止まった。  あ、またうっかりだ!  途中で手が止まると!……魔法陣は消えていった。  対空砲火は激しさを増す。  ひときわ大きく1発だけあがってくる光はミサイルだろう。  だが、衝撃は来ない。  音さえ聞こえない。  それどころか、ノーチアサンさんはぐんぐん降下速度を上げていく。  もしかすると、街がはっきり見えてきたから、スピードを正しく感知できるようになっただけかもしれない。    街の中で、比較的無事そうに見えたビル。  その屋上に、自動小銃や肩撃ち式対空ミサイルを持った数人の影。  それと2つの銃身を持つ対空砲が見えた。  いかにも古めかしい。後ろに人が座り、目で見て操作する奴だ。  操作している男に、カメラは向いている。 『突入! 開始!』  オルバイファスさんからの無線連絡。その直後、初めて艦が揺れた。  その時、屋上を肌色の巨大な何かがなでた。  手だ。しばらくかかったが、それは人間の手だと気付いた。  気づく間に、屋上は形を失った。  コンクリートは灰色の砂、いや、ホコリかもしれない。とにかくバラバラになって、最上階に落ちていった。  砕け散ったのはコンクリートだけ。  人間たちはコンクリートに埋め込まれていた鉄筋に引っかかった。  巨大な半透明の手が、もう一度なでる。  次は、手にした銃と、対空砲、武器が粉々になった。  この能力が誰の物かは、CGで描かれた配置表を見ればわかる。  舳先をビルに乗せた格好で止まるノーチアサンさん。  その船尾下に、しゃがむ巨大な人影がある。  音楽部部長、竜崎 舞。  あのベースの女の子は、物質を構成する結合力を自在に操れる。  それを操れば巨人にもなれるし、硬い物も灰にできる。
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