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レミュールさんは、医者のように説明を続ける。
「脳には血液脳関門という、血液と脳の間にあり、血液からの有害物質を防ぐ門があります。
ですが、この門をすり抜けて脳までたどり着く物質もあります。
アルコール、カフェイン、ニコチン、抗うつ剤などです。
あなたの場合は、夕食で飲んだ酒のアルコールと、夜中に眠気覚ましとして飲んだコーヒーのカフェインでしょう」
緊張を感じさせない。
本物の医者の様だ。
「アルコールにしろ、カフェインにしろ、普通の人間なら数時間で分解されててしまいます。
ですが、異能力者の中にはこれらの物質を、脳の中でエネルギーに変換する人もいます」
僕には、ちんぷんかんぷんだ。
何か、重要な事を聞き逃している気もする。
「あの……」
その時、声をかけてくる女性がいた。
短く刈り込んだ金色の髪。
身長は140センチほど。
しかし体は大変鍛えられ、筋肉質。
黒いワークキャップ。
ひたいの部分には白い刺繍で、広がる2枚の翼が。
黒いスーツとスラックス。
デザインが違うが、これも制服のようだ。
どこかの軍隊を思わせる。
胸には同じような名札を付けている。
サフラ・ジャマルとあった。
「異能力者について、もっと基本的なところから教えた方がいいと思います」
その目には、僕への強い共感があった。
「失礼しました」
レミュールさんは初めてしまった!と表情に浮かべ、謝った。
「異能力者とは、最もプレーンな物理では、起こらない現象を意図的に起せる人間のことです。
あなたの世界にも概念は伝わってませんか? 超能力とか、魔法とか」
それなら、わかります。
「そうですか。では、話をつづけます。
今言ったように、あなたの脳には、アルコールやカフェインを異能力に変える能力があります。
ですが、このようなことが起こったのは、今回が初めてだそうですね? 」
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