かき揚げ丼 フロンティア

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 レールガンとは、2本の平行に並んだ導線に、弾丸を挟み込み、そこに電流を流すことで弾丸を発射する銃だね。  確かにそれなら発射に火薬はいらない――。 『早く折れ』  その一言で、僕は内臓をわしづかみされたような恐怖に襲われた。  次の瞬間、バキバキッっと派手な音を立てて、砲弾は砕け散った。 『どうやら、興奮状態になると力を発揮するようだな。  それはタングステン製の徹甲弾だ』  それって、戦車の最も分厚い装甲も貫けますか? 『よく知ってるな。その力を、もっと自覚しろ』   僕が叫んだり、ひっくり返ったりせずに済んだのは、こういう驚きが他のメンバーのも合わせると何度目かになるからだ。  超次元技術研究開発機構、通称・魔術学園。  彼らの世界にも日本という国はある。  その日本政府が、宇宙人や異世界人の協力を得て作り上げたのが、その学園だ。  目の前にいる二人と、その仲間たちは、高等部の生徒総会議員。  彼らは、チェ連に異世界召喚されたんだ。    レミュールさんは魔法部部長。  オルバイファスさんはテニス部の部長。  ついでに言うと、僕らがいまいる場所も議員の体内だ。  水泳部部長、ノーチアサン。  オルバイファスさんと同じ、人間に擬態できるメカ生命体。  今は、ホオジロザメのような精悍な姿で、全長170メートルの体を生徒会の根城として提供している。  いや、それどころじゃない。 「……どうすればいいんですか? 」  僕の心に、非常に対する根源的な感情、恐怖がわき上がる。  たしかに僕は、主人公が異世界に召喚されて冒険する小説を書きたいと願った。  けど、自分が来てしまうなんて!! 「僕はどうやったら帰れるんですか!? もっとかき揚げ丼を食べて、ビールを飲めばいいんですか!? 」   「そんなことをしても、健康を損なうだけですよ」  レミュールさんが、僕への同情をこめて答えた。
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