0人が本棚に入れています
本棚に追加
「なあ。魔法なら、かけられた目的があるんじゃないか? 」
その時、オルバイファスさんが人間の姿に戻りながら声をかけた。
「小説を書き上げるのに必要な事をさせる。それしかないだろう。それは取材だ」
僕が書こうとした小説は、異世界召喚物だから、理屈は合うと思うんだけど。
「待ってください! 彼は異能のない世界からきたんですよ!? 」
そう!
レミュールさんの言うとうり、僕に異能を使うノウハウなんかない。
それでも、オルバイファスさんは考えがあるようだ。
「彼は、自分を信じて臨んだからここにいる。それが前提なら、信じる心がなければ魔法が消えてしまうではないか。だから我も、南を信じることにする」
――◆――◆――◆――◆――◆――◆――◆――◆――◆――
その夜、ノーチアサンさんの胴体にある食堂に通された。
まさに戦艦の中らしい。
ならぶ長テーブルで、40人近い生徒会と士官候補生たちと、寄り添うように固まった。
それにしても、滅亡寸前の世界にしては豪華な料理が、すし詰め状態に並んでいる。
……というより、飛び切り新鮮な材料を、腕によりをかけて生き生きと作ってないか?
生の果物や刺身まである。
「最近、日本と小規模なポルタが開いたのよ」
そう言ったのは、自慢げに笑う日本人の少女シェフ。
胸に城戸 智慧と書いていた彼女の足は、ギブスで固定されており、電動車いすに乗っていた。
以前の戦いで負傷したらしい。
えーと、ポルタって、次元を超える門の事?
「そうよ」
それにしては、あの二人の生徒だけ違う物を食べてるようだけど?
味の濃そうなスープに入った、缶詰みたいじゃない?
「ああ、あの二人はタンパク質の形が地球人とは違う、異星人なのよ」
その2人は、見た目は地球人の男女そっくりだ。
「擬態だよ。ロボットの体に、次元湾曲機能を使って入ってるんだ」
彼らは気にするな。というように笑いかけながらそう言った。
オルバイファスさんもいっしょなのか。
最初のコメントを投稿しよう!