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「そんなことありませんよ。先輩を生んで育てるのは本当に大変だったと思うので尊敬していますよ。先輩を愛して育てるなんてできるのは世界広しといえど、先輩の両親とマザーテレサぐらいですよ」 「世界レベルで嫌われてるの!?」 「先輩はマザーテレサにだって無視されるレベルですよ」 肩を竦めてまるでそれが当然かのようにひかりがやれやれと言った態度を取る。 「ああ。分かりますよ。先輩が私の恋人になることに対して臆することも。だって私は可愛くて勉強もできて運動もできるうえにお金持ちの家の子供ですからね。身分の違いに恐れおののくことは当然のことです。先輩が私の事を好きになるどころか、好意を持つだけでもおこがましいですもんね」 「傲慢不遜もそこまで行くといっそ清々しいな」 「いやぁ」 「一応言っておくけど誉めてないからな」 照れたように頬を染めて頭を描く後輩を半眼でたしなめる。 「ちっ。知ってますよ。でも、先輩は私に興味津々ですよね」 「それはない」 きっぱりと言ってやるが僕の可愛い後輩は当然のように無視する。 「私の色々な事を知りたいんでしょう?」 「いや、別に」 「先輩こそ照れなくていいんですよ。何が知りたいんですか? 私のパンツの色ですか?」 「年頃の女の子が真顔でそんな事言うんじゃありません!」 思わず父親のような発言をしてしまう。 「でも、知りたいんでしょう?」 思わず言葉に詰まりそうになるが、先輩の威厳を保つため、というか人間の尊厳を保つためにも即座に否定する。 「むしろ、僕が知りたいのはお前の僕に対する認識だ」 「女の人の私生活や趣味を把握するのが趣味の人」 「誤解を招くことを言うな!」 「先輩、知っていますか?」 いつになく真面目な顔でひかりが僕をまっすぐに見つめてくるので思わずのけぞる。 「火のないところに煙は立たないんですよ」 「お前が火を起こしているんだ! まるで僕に問題があるように言うなよ!」 びっくりした。暴論にびっくりした。
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