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「その話、まだ続いていたの!?」 「数分前の話すら覚えていられないなんてミジンコ以下ですね。ミジンコ未満」 「もう、ミジンコと対等ですらいられない!」 「何が不満なんですか、こんな可愛い女子に交際を申し込まれているというのに」 「まぁ、確かに可愛い事は認めるが」 にんまぁり。 という音が聞こえそうなほどの笑顔をひかりが浮かべる。 僕はその笑顔にむしろ恐怖を覚える。 しかし。すぐに無表情になってつぶやく。 「可愛いと言われて鳥肌が立ったのは初めてです」 「お前、本当に性格は可愛くないな」 「そんな所も好きなんだけどな……」 「まるで僕が言ったようなセリフみたい言うな!」 「ちっ」 分かりやすく舌打ちされた。 「ま、先輩に選択肢なんて初めからないんですけどね。はい。今から私と先輩は恋人です。おぞましい」 「いや、もう。本当にどうしたいの?」 「初めてできた恋人に感動に打ち震えていいんですよ」 「初めてできた恋人がこんな感じなんてロマンもへったくれもないな」 「最初で最後なんで」 「最後って決めつけるなよ!」 僕が思わず叫んだところで、扉が激しく蹴り開けられた。 「お前らうるさいぞ! 自分の立場が分かっているのか!」 叫びながら入ってきたのは右頬に大きな傷跡のある強面の男。まるで漫画に出てきそうなあからさまなヤクザ顔の男だった。 後ろにはスーツ姿の男が続いて入ってくる。 「お前ら自分の置かれている状況わかっていんのか。あぁん?」 ヤクザがひかりに詰め寄って胸倉をつかむ。 「おい。乱暴はやめろ」 思わずヤクザに言うと、ヤクザがこちらを睨みつけてくる。 「小汚いおっさんに誘拐されて私、大ぴーんち」 「お前も、空気読めよ!」 ひかりに叫ぶ。 「犬童ひかりさん。申し訳ないですが、あなたにはしばらく大人しくしていてもらいます」 後ろに立っていたインテリメガネが一歩前に出て言う。 「あなたのお父上に聞いてほしいお願いがありましてね。お父上も娘さんの無事を思うなら私達の言うこと聞いてくれるでしょう」 どうやら、僕たちは面倒事に巻き込まれてしまったらしい。しかし、今時こんな犯罪まがいのことをしていることが本当にあるとは。
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