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「私を誘拐したぐらいでどうにかなるなんて思ないほうがいいですよ」 「……ほう。お父上は娘さんが可愛くないと」 インテリメガネがメガネをくい。と持ち上げる。 「いや。溺愛も溺愛ですよ。高校生の娘と一緒に風呂に入ろうとするぐらい。ひくわー」 「……そうですか」 インテリメガネの顔が引きつる。なぜかヤクザは肩を落としていた。 「なら、私たちの要求も聞いてくれるでしょう」 「そんなに世の中うまくいきませんよ」 「ほう? 興味深いですね。この状況でどうにかなるとでも?」 「もちろんですよ。ここは私の恋人がカッコ良く助けに来てくれるシーンですから」 「現実は漫画やドラマとは違うんですよ。それに、その恋人とやらはどこにいるんですか」 嫌な予感しかしなかった。まっすぐな視線で僕を見つめてくるひかりの視線を感じていたが、決してひかりの方を見ないようにまっすぐ視線を固定する。 「そこにいる男です」 「僕をハメやがったな!」 思わず叫んでいた。 「何の事ですか? ひゅーひゅー」 「その吹けもしない口笛でごまかしたつもりか……」 「ほほう。兄ちゃんが恋人なのか」 ヤクザが興味深そうに僕に近づいてくる。 「いや、恋人というかんなんというか」 「あぁん? 違うんか!?」 「いや、そうです。はい」 にやにやとこっちを見ているひかりが恨めしい。 「では、お父上に電話してもらいましょうか」 インテリメガネが携帯を取り出して電話を掛ける。 「ああ。社長ですか初めまして。……ええ。私達の要求は見てもらえましたか? え? そんなの呑めるわけがないと。……ところで、娘さんは元気ですか。ええ。声聞きたいですか」 インテリメガネが携帯をひかりの耳元に持っていく。 「どうもー。娘ですー。たすけてくださいー」 棒読みにも程があった。 「……信じてもらえましたか。要求は呑んでもらえますよね?」 「あんなセリフで信じたの!?」 思わず叫ぶ。まぁ、ひかりの性格だと素直に助けを求めるはずはないから信憑性はあるのかもしれない。
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