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「黙っとれ」
ヤクザがひかりを恫喝する。
「ほら、どうしますか。まずは最初の一発目です」
ヤクザが拳を握る。
「せっかくですから、右手か左手かは選ばせてあげますよ」
僕はひかりとインテリメガネを交互に見る。
「先輩のミジンコレベルの脳みそでも分かりますよね。そんなメガネの言うこと聞いたって何も解決しないんですよ」
そんなのは分かっている。時間稼ぎにしかならない。それでも。僕は。
そっと左手をインテリメガネの前に出す。
「いいですね。素晴らしい」
わざとらしく拍手をする。メガネが僕の小指を掴む。
「それが続くといいですね」
「やめて! やめなさい!」
ひかりが叫ぶ。ぐっと歯を食いしばる。
バキ。
鈍い音が全身を駆け巡り。直後に激痛が来た。
「ぐぅぅぅぅ」
叫ぶことができないほどの痛み。椅子に縛られているためのたうち回ることもできない。
痛い。痛い。痛い。もの凄く痛い。
それでも、数分。ものすごく長い数分が過ぎると少しだけ痛みが引いてきた。
「次はどうしますか?」
インテリメガネがつぶやく。もう一度、あの痛みを味わえと。
体が震える。痛みを思い出すだけで恐怖で吐きそうになる。
「先輩! やめてください! 馬鹿なんですか!」
ひかりが泣いていた。
「はは。ははは」
思わず笑えてきた。
「お前は僕を馬鹿にしているぐらいでちょうどいいよ。だから。泣くな」
僕はインテリメガネの顔面に左手を突き付ける。
「おかわりだよ。陰険メガネ」
驚いたように目を見開いた後、インテリメガネが笑った。
「ははははは。素晴らしい。素晴らしいよ。では、覚悟はいいかな。彼氏君」
インテリメガネが僕の中指を握る。
「やめて! やめてってば!」
ひかりが叫ぶ。
僕が再びあの痛みに耐える為に、歯を食いしばる。大丈夫。時間さえ稼げればいい。
インテリメガネの手に力が込められて、僕の中指が嫌な方向に曲がる……。
「やめてって言ってるでしょ! お兄ちゃん!」
ひかりが絶叫して……。
「お兄ちゃん?」
ひかりの意味不明の言葉に僕は混乱する。
「それ以上、先輩に何かしてみろ。お前の事地の果てまで追い込むからな」
猛獣のような瞳でインテリメガネを睨みつけている。
「おお。怖い。妹だ」
「妹?」
僕は再び混乱する。
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