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「そう。僕の妹だ。そして、あそこの柄の悪いのが僕たちの父親」
「え?」
頭から疑問符が取れない僕を置き去りにメガネが話を続ける。
「ごめんな。こんなことして、ちょっと妹の好きな人っていうのを試してみたかったんだよ。ほら、家は色々とあるからね」
苦笑しながら僕の拘束をインテリメガネが外してくれる。
「芝居だったって事ですか?」
久しぶりに解放された解放感を感じながら僕は立ち上がる。
「そうだよ。悪かったね。その小指は心配しなくても折ってないよ。脱臼させただけだ。すぐに治療すれば2、3日で元通りさ。あと、その右手に持っている携帯は申し訳ないけど渡してもらえるかな。警察に通報しているんだろ? 警察に手をまわさないといけないしね」
床に転んだはずみでポケットから飛び出した携帯で通報していたことはすでにバレていたらしかった。
同時にひかりも拘束を解かれたらしく僕に駆け寄ってくる。
「やぁ。大丈夫かい」
ひかりはインテリメガネを無視して横を通り過ぎる。いや、通り過ぎざまに足を踏み抜いていた。
「大丈夫だったか?」
「先輩は馬鹿なんですか!」
「ミジンコ未満の脳みそだからな」
「マジ、脳みそ沸いてるんじゃないですか。何であんなことしたんですか」
泣きながら僕の胸を思い切り殴りつけるひかりを見ながら思ったことを口にする。
「あー実は、僕はひかりの事が好きだったんだねぇ」
感慨深く呟く。
「それに、僕はひかりの恋人だし」
ひかりは僕を見上げながら言う。
「最初で最後のですよ」
その言葉の意味を考えて。その意味を知って僕は言った。
「それはプロポーズ? 案外。可愛いところあるね」
僕の言葉にひかりは顔を真っ赤にしながらつぶやいた。
「死ね!」
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