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生徒が誰もいない。
今日が土曜だとしても、部活動の生徒はいてもいいんじゃないだろうか?
そんな疑問に答えてくれたのは、校舎の横にある裏手の丘に続く道から降りてきた60歳ぐらいのおじさんだった。
「おや、君も裏の桜の木を見に来たのかい。」
おじさんは僕に少し淋しそうな顔で笑った。
「家、今日は同窓会がありまして、10年振りだったのでつい懐かしくなって学校を見に来たんです。変わってないな~と思いまして……学校自体は……。」
「君はしらないのかい?この学校は二年前に廃校になったんだよ。」
えっ!僕はビックリして思わず声を出した。
「それに丘にある桜の木も来週の月曜日には移植されるんだよ。寂しくなるからついつい見に来てしまったんだよ。」
おじいさんはそういいながら、僕の前から去っていった。
僕は丘にある桜の木を見に行った。
そこには桜の木が一本、今も変わらずたっている。
桜の木の横に立ち、見えるのは小さなこの街の風景だ。
ふと足元に目をやると、桜の木の下に置かれた花束が置かれていた。
そういえば、さっきのおじさん言ってたな、君もって……そいつにとっても思い出の場所だったのかな。
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