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「……というわけで、話し合いというか、会食の席を設けたいと」
『いいよ。先方の都合に合わせるよ』
湯川先生のマンションで一泊し、夜帰宅したあと、合宿中の翔吾くんに電話をすると、あっけなく了承の返事がもらえた。まずは良かった、と胸を撫で下ろす。
『話はしておきたかったし、いい機会だと思う。例のお医者さんだよね?』
「うん、お医者さん」
『あかりと結婚したいって?』
「う……うん、そういう話になった。ごめん」
翔吾くんは嫌がるかと思ったけど、電話口では明るい口調だ。
『あかりは謝らなくていいよ。そうなると思っていたし。そういうつもりで、俺たちはあかりを共有したいって思っているんだから』
いや、ほんと、おかしな関係を強いてしまって申し訳ないと思う。二人とも、すごく複雑な感情を抱いていると思うのに。
『じゃあ、とりあえず、彼氏二人ってことだね? 健吾はいないんだよね?』
「うん。健吾くんはセフレだから」
『わかった。なら、いいよ』
翔吾くんは健吾くんさえいなければいい、ということなのかな。案外、ライバル視していたのかもしれない。男の子の考えることは不思議だ。
『……あかりに会いたいなぁ』
「私も翔吾くんに会いたい」
ぽろり零れた言葉に、翔吾くんが笑う。
『素直だね、あかり』
「ダメ?」
『ダメじゃないよ。嬉しい』
優しい声。すごくホッとする。
旭さんの曾孫なのに、三人とも性格が違う。アプローチの仕方も全然違う。
……結局、荒木さんのことは翔吾くんには話せていない。
余計な心配をかけたくない、というのは私の勝手な考え。翔吾くんは話して欲しいと願うだろうけど、今はまだ話せない。話すべきじゃない気がする。
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