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不思議だ。セフレのときにはなかった変化なのだ。
感情の変化に、態度の変化。どちらも、私にとっては驚きの材料だ。
これが「付き合う」ということなんだなぁ、と再度思案して、幸せを確認する。
叡心先生と暮らしていたときと同じような、穏やかな幸せだ。ずっと続けばいいのに、と願わずにはいられない。
ずっと、が無理でも、できるだけ、幸せを感じていたい。できるだけ。
荒木さんとこの幸せは共有できるだろうか、と考えても、「できる」とは言いがたい気がする。
おそらく、荒木さんが望むのは刺激的なセックスや完璧な主従関係で、穏やかな日常ではないはずだ。相手を縛って、追い詰めて、高揚感を得たいと思っているはずだ。
私は、そんな荒木さんから精液を搾取するということができるだろうか……難しい気がする。
縛られて、追い詰められて、泣きながら「私の中に精液を出してください」と懇願している自分しか想像できない。荒木さんはそんな私を冷たい目で見下ろして、薄っすら笑みを浮かべるのだ。
「そんなに欲しけりゃ出させてみろ」と椅子に座って命令するのだ。私は泣きながら、勃起していない陰茎を必死で奥まで咥えて……。
それが毎週続くのは、やっぱり厳しい。厳しいと思う。
体力的には多少しんどくても、湯川先生や翔吾くんに貪られたほうがだいぶマシだ。うん、そうだ。
それに、「それ以上増やさないように」と湯川先生に釘を刺されたので、彼氏もセフレも増やせない。つまりは、荒木さんとはセフレにはなれないし、彼氏にもなれない。
やっぱり、断るしかない。
押しに弱すぎると言われたばかりだけど、何とか、何とか、きちんとお断りをしよう。しなければ。
それは、私のためだけじゃない。
湯川先生と翔吾くんのためでもあるのだから。
荒木さんに絆されないように、頑張って断ろう。
私は堅く決心した。
やっぱり、SMは無理だ!
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