2419人が本棚に入れています
本棚に追加
BGMはゆっくりとした琴の音。耳に心地好い。
翔吾くんの指を親指で一本一本ゆっくりと撫でながら、節が大きいなぁと思う。湯川先生の指とはまた違う。男の人の指。
「合宿と試合はどうだった?」
「まぁ、良かったよ。勝てたし」
「良かったね、おめでとう」
「ありがと。最後の試合だからね。頑張るよ。ほんとは観に来て欲しいけど」
土日なら何とかなるかなぁ。でも、野球と違ってサッカーはルールをよく知らないから、とりあえず翔吾くんだけ見ていればいいのかな。ボールを見ていればいいのかな。
解説……健吾くんに頼もうかな。あ、でも、健吾くんはサッカーに詳しいのかな。
「土日なら行けるかなぁ」
「そう? じゃあ、来月の十七日は?」
「来月……九月十七日、は、難しいかも」
「三連休だから、セフレの誰かとどこかに行くの?」
「ううん、そうじゃないんだけど」
ぎゅうと手を強めに握られて、真面目そうな顔をされて、じっと目を見つめられるとドキドキする。久しぶりに会っているからなのか、恋人になったからなのか、わからないけれど。
「あかり、俺……」
「お待たせ、あかり。引き継ぎがちょっと長引いちゃって」
個室にやってきた湯川先生の顔を見て、私と翔吾くんの緊張が高まる。思わず、手を引っ込める。
「あ、いいのに、それくらい。慣れなきゃいけないんでしょ、そういうのも」
私の右隣に腰を下ろし、湯川先生が笑う。笑うのに、私の右手、翔吾くんに見えない位置で重ねられていますけど!? あ、今、ぎゅって握られましたけど!?
平気そうな顔をして、妬いている先生がかわいい。ちょっときゅんとする。
最初のコメントを投稿しよう!