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「じゃあ……。スタート!」
私と遥人は桜の木の下に走った。
花びらは今も落ち続けている。
風もなく、絶好の花びら拾いチャンスだ。
木の下に入って桜を見上げると、ちょうど目の前に花びらが落ちてくるところだった。
よし!
今だ!
私は花びらに向かって、バッと手を出す。
けれど、指の先でするりとかわされてしまい、花びらはそのまま落ちていく。
「待て!」
その花びらを追いかけて、手をすくい取るようにして左右交互に差し出すも、花びらには逃げられてしまう。
そして、何度か挑戦しているうちに、捕まえようとしていた花びらは、地面に落ちてしまった。
「ま、まだまだたくさん落ちてくるし」
私はすぐに次の花びらへと狙いを定めた。
私の頭上をヒラヒラと舞っている花びらに、右手を伸ばしながらジャンプする。
けれど、あと少しというところで花びらは軌道を変え、指先から離れていってしまった。
「まだ落ちてないし……!」
その後を追いかけ、私は何度も何度も捕まえようとする。
でも、花びらはまた地面に落ちてしまった。
意外と難しい……。
ゆっくり落ちてくる花びらは、簡単に捕まえられそうで捕まえられない。
練習すれば良かったかな……?
そんな考えが頭を過る。
いやいや、ダメだ。
ジンクスって練習して叶えるもんじゃないし。
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