0人が本棚に入れています
本棚に追加
それにこのジンクスは後押しのつもりなんだから、勢いが大事なのよ。
練習して勢いがなくなったら、意味がないじゃない。
今の考えを追い出すように、私は首を左右に振る。
どうしたら……。
私は遥人がどんな様子か、チラリと横目で確認した。
遥人も苦戦しているのか、手を何度も突き出して、花びらに挑戦しているようだった。
まだ大丈夫。
花びらを捕まえるのに、まだ時間はある。
私は深呼吸をして、はやる気持ちを落ち着ける。
よく考えて。
闇雲に突っ込むだけでは、花びらは手に入らない。
よく見て。
花びらがどう動くのか。
何も策がなければ、花びらだって私の元には落ちてこない。
一つ息を吐き、私は一番近い花びらを、ゆっくりと追いかける。
花びらが指の先、数センチまで迫った。
もう少しで触れられそう。
そう思って勢いよく手を前へ出すと、花びらは私の勢いに押されるように前へ流れ、その後はいきなり思わぬ方向へ舞い、遠くに行ってしまった。
そっか……。
掴もうとする手の風圧で、花びらの軌道が変わってしまうんだ。
ただ強く出るだけではいけないんだね……。
そう理解した私は、出来るだけゆっくりと花びらを追うことにした。
ゆっくりゆっくりゆっくり……。
花びらを驚かさないように……。
私はゆっくりと花びらの後を追う。
最初のコメントを投稿しよう!