桜ジンクス

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 それにこのジンクスは後押しのつもりなんだから、勢いが大事なのよ。  練習して勢いがなくなったら、意味がないじゃない。  今の考えを追い出すように、私は首を左右に振る。  どうしたら……。  私は遥人がどんな様子か、チラリと横目で確認した。  遥人も苦戦しているのか、手を何度も突き出して、花びらに挑戦しているようだった。  まだ大丈夫。  花びらを捕まえるのに、まだ時間はある。  私は深呼吸をして、はやる気持ちを落ち着ける。  よく考えて。  闇雲に突っ込むだけでは、花びらは手に入らない。  よく見て。  花びらがどう動くのか。  何も策がなければ、花びらだって私の元には落ちてこない。  一つ息を吐き、私は一番近い花びらを、ゆっくりと追いかける。  花びらが指の先、数センチまで迫った。  もう少しで触れられそう。  そう思って勢いよく手を前へ出すと、花びらは私の勢いに押されるように前へ流れ、その後はいきなり思わぬ方向へ舞い、遠くに行ってしまった。  そっか……。  掴もうとする手の風圧で、花びらの軌道が変わってしまうんだ。  ただ強く出るだけではいけないんだね……。  そう理解した私は、出来るだけゆっくりと花びらを追うことにした。  ゆっくりゆっくりゆっくり……。  花びらを驚かさないように……。  私はゆっくりと花びらの後を追う。
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