桜ジンクス

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 けれど、今度は花びらが目の前を通りすぎるばかりで、さっきよりも花びらに近付ける回数が少なくなってしまった。 「……うーん。ダメだ。ゆっくりだと、花びらの早さに追い付けなくて、置いていかれる……」  かといって、早く追いかければ、風圧で軌道が変わってかわされる。  ……もうどうすればいいのよ!  私はどうすることも出来ない気持ちを腕にのせて、がむしゃらに花びらを掴みに行った。  どうしても花びらを手に入れたかった。  だって……。  どうしても叶えたい願いなのよ!  ずっとずっと一緒にいたいの!  話せばケンカばかりだったけど……。  私にはそれも楽しい時間だった。  いつの間にか、一緒にいるのが嬉しくなってた。  いつの間にか、触れ合うのが恐くなってた。  いつの間にか、この関係を壊してしまうんじゃないかって、怯えていた。  花びらは思うように掴めず、一枚も取ることが出来ない。  するりするりと指先から逃げられ、それがまるでお前の願いなんか叶わないと言われているようで……。  私は滲み出した涙を、手で乱暴にこすってなかったことにする。  諦めてないんだから。  絶対に花びらを手に入れて、お願いするんだから。  どうか付き合えますようにって。  それで、告白するんだ。  遥人に。  けれど、現実は無情だった。
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