桜ジンクス

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 私の決心とは裏腹に、花びらは私の手にとどまってはくれなかった。  気合いを入れ直した私の耳に、終わりを告げる遥人の言葉が届く。 「花びらが取れた!」  遥人の声に、弾かれるように顔を上げると、遥人は見せつけるように指で挟んだ花びらを見せてきた。  ああ、終わった……。  終わってしまった……。 「この勝負は俺の勝ちな」  遥人が勝ち誇って笑う。  この顔も、私が大好きな顔の一つだった。  遥人との勝負に負けるのは悔しいけれど、いつもそんなに嫌でもなかったのは、この笑顔があったからだった。  でも、今日は……。 「これで四十勝三十九敗二十二引き分け。トータルでも俺の勝ちが決まったわけだ」  今日は勝ちたかった。  勝って告白したかった。  負けてしまった今となっては、ジンクスにも見放されたみたいで、告白する勇気なんて出てこない。 「私の負けだわ……」  これは、告白して断られてきまずくなるよりも、卒業後に会えた時、今まで通り話せるようにという神様のお導きかもしれない。  好きだと伝えるよりも、この関係を壊さない方が良いよということかもしれない。  きっと、そうなんだ……。  花びらが取れなくてがっかりしているはずなのに、私は心のどこかでホッとしているのに気が付いた。  もしかしたら、私は告白が出来ない言い訳が、欲しかったのかもしれない。
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