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つまり、私?
え?
驚きで停止しかかった身体を動かし、私は遥人をうかがいながらゆっくりと顔を上げる。
遥人は真っ直ぐに私を見ていた。
力強い目で、射ぬかんばかりに私を見ていた。
「どう? 叶いそう?」
私に同じ質問をする遥人の頬は、うっすらと赤くなっている。
それを見ていたら、喜びがじわじわと足から溢れだし、私の身体中を巡りだした。
そして、歓喜が私のてっぺんまでたどり着き、それが頭から飛び出そうとする勢いのまま、私は遥人に答えた。
「か、叶う! 叶うよ!」
目の前で、真面目な顔をしていた遥人顔が、満開の桜のようにほころんだ。
今までで、一番の笑顔だった。
そして、その笑顔が私に近付き、私は温かなぬくもりに包み込まれた。
遥人が私を抱き締めていた。
消えていた心臓の音が、猛烈に主張を始める。
出かかっていた涙は、全て吹っ飛んでしまった。
今は遥人の体温のせいだけじゃなく、顔が熱い。
私が遥人の腕の中で、どうすればいいのか分からなくなっていると、遥人が顔を傾けるのが動きから察せられた。
「ひゃっ!」
いきなり耳元で名前を呟かれ、変な声が出てしまった。
からかわれるかもと思い遥人の顔をうかがうと、そこにあったのは優しい笑顔で……。
至近距離笑顔に今度は耳まで熱くなるのを感じ、私は恥ずかしくて顔を伏せようとしたけど、遥人に顎の下から指ですくい上げられ、間近で見つめられた。
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