安寧の三日間、α

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「春だな……」 ──桜の花びらが舞い散る歩道のなか。 「頭の中が?」 「お前のな」 幾人の少年たちが、その幻想の中を歩いていた。 「ははは兄弟、それは喧嘩を売ってるってことでいいのかね?」 黒のミニハットを指先でくるくる回す、黒髪ロングの中性的な男が挑発的な台詞を吐く。 兄弟、と呼ばれたのは、長い前髪で両目が隠れた、犬の尻尾を持つ黄土色のおかっぱの少年だ。 「思ったんだが、それは買えばお前をボコれるってことになるんじゃねぇかな……」 「ふえぇ、脳筋みたいな発想だよぅ……」 そんな喧嘩腰のやり取りに反応したのは、会話の第三者である猫耳ニットの活発な少年である。 「にゃ!?バトルの予感……みぃの出番にゃ!?」 「うるせー猫、お前が混ざると頭悪くなるから黙ってろ」 「にゃん……」 犬の少年がぞんざいな罵倒で猫男をしょげ返らせたが、ロン毛の男は逆に応援して励ました。
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