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そんな彼女が小柄な体躯をさらに縮こまらせて、居心地悪そうに座席に収まっていたのだ。
「何やってんすか、師匠。ていうか何で居るんですか。ここ俺らの教室ですよ」
見知ったネアルが声をかけてきたからか、マユはしょんぼりしていた尻尾をわずかに振って返事をする。
「お、おぅ、山田じゃん!山田じゃん!」
「何で二回言ったんですか」
「そら大事なことだからよ……そらもう大事なことだからよ……」
何だか挙動不審げに目線を泳がせるマユの姿に、ネアルは余計に疑念を抱く。
そもそも去年の時点で三年生だったので、もう卒業して学校には居ないはずである。
それにも関わらず、なぜ彼女がここにいるのだろうか……?
「…………」
と、そこでネアルはごく単純な理由を思い付いた。
尻尾を小刻みに振って愛想良くする様が、悪いことをして怒られる寸前の犬の姿そのものだったからだ。
なのでネアルは、真っ正面から聞いてみることにした。
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