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その後は指輪交換。
そのあたりから美香先輩が“やるか？やるか？”と口の中で呟き始めた。
「……いよいよね」
何が？
「誓いのキスよ」
今まで何度か結婚式に出席した経験では、誓いのキスは必須ではないらしい。
頬っぺたとかおでことかの場合だってあったし。
戸川っちのあの性格だと、見せ物になるのは嫌がりそうだ。
「戸川はしないんじゃないすか？」
ヒソヒソ声で美香先輩に答えたけど聞いちゃいないようで、何やら意味不明なことをブツブツと呟いていた。
「頬か……腰か……迷うわ……」
祭壇の前の二人はこんな呟きなんか知るはずもなく、厳かな空気に包まれ、静かに指輪交換は進んでいく。
そしてとうとう、皆の期待に応えた訳じゃないだろうけど、神父さんがその時を告げた。
「誓いの口づけを」
水を打ったように静まり返った場内に緊張が走った。
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