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過去に見たブーケトスの恐ろしい光景が脳裏に浮かんだ。
女の子がキャーキャー叫びながら醜く……いや熱く戦うアレ。
「あれを男の俺がやるんですか」
「そうよ」
美香先輩が威圧的にアゴを上げて腕組みをした。
「美香先輩が行った方が取れますって。みんな恐れて左右に逃げますから。モーゼの海割りみたく」
「なに、そのモー何とかって」
「大昔、敵から民衆を逃がそうとして、手をあげただけで海水が分かれて道ができたとかいう話」
「海を分けるほど大変じゃないわよ。空からブーケが降ってくる、受けとめる、ただそれだけよ」
「何?何の話?」
戸川っちを拍手で送り出すのに夢中になっていた梨香子先輩が話に入ってきた。
「美香先輩がブーケトス、俺に取れって言うんです」
「だって、梨香子いっつも結婚式出る度にブーケ欲しい欲しいって言ってるじゃん」
それを聞いて梨香子先輩が顔を真っ赤にした。
「やだ、それ言わないでよ!」
「ほら梨香子背が小さいからさ、いつも取れないのよ」
「言わないでってば!」
「ちょうどいいじゃん。今日は相原いるんだし取って貰えば」
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