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「さっきから美香、いないわね」
「ほんとだ。いつもなら絶対、最前列で気炎吐いてるのに」
庭園内には海事関係だけでなく、経企室や二人の大学時代の友人らしき人達も目立った。
片桐王子の姿もある。
すごいや。
二人の式、見ちゃうんだ……辛いだろうに。
「ちょっとー!梨香子!」
その時、遠くから美香先輩が興奮気味に小走りで戻ってきた。
「見ちゃったよ見ちゃったよ戸川君を!壮絶格好良かった!」
興奮冷めやらぬ様子でまくしたてる美香先輩に、梨香子先輩が呆れ顔で言った。
「どこ行ってたのよ」
すると美香先輩は得意気に鼻を膨らませた。
「ふっ……。花嫁の控え室」
「なっ、なんで美香先輩が!」
「美香、何しに行ったの?」
興奮状態の美香先輩の返答はまったくピントがずれていた。
「新婦の姉ですって嘘ついたら通してくれたのよ。それで成瀬さんと話してたら戸川君が入って来てさ!私の顔見て向こうも仰天してさ!」
「だから、何しに?」
まさか、身を引けとか。
美香先輩なら言いかねない。
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