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チャペルの中では既に新郎新婦の親族が左右に分かれて最前列に着席していたけど、入り口では少しでもいい席を確保しようと右に進む者やら左に進む者やらでごった返していた。
これじゃ座るのは無理そうだ。
フラフラと右の新郎側に進みかけたら誰かがグン、と腕を引いた。
「こっちよ、相原」
左側の新婦席にアゴをしゃくりながら美香先輩がぐいぐい進む。
「右ですよ、新郎側は」
「いいや。新婦側がいいのよ」
なんとか新婦側の中ほどの立ち見席を確保すると、美香先輩が不満げに鼻を鳴らした。
「もっと前がよかったのに」
「何で新婦側?」
見れば、海事女子軍のほとんどがしっかり新婦側を確保している。
「新郎側は戸川君の背中しか見えないけど、こっちだと顔が見えるの。同じ会社だし、いいでしょ」
「なんつー理由……」
海事女子軍のせいで経企室の一部が新郎席に回ったらしく、片桐王子と経企室長と欧州部長が喋ってるのが見えた。
「二人とも大事にされてるわね。部長クラスが式にまで来てるわ。普通は披露宴だけでしょ」
梨香子先輩の小声にうんうんと頷く。
成瀬ちゃんなら重役からの祝電とかもすごそうだ。
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