2172人が本棚に入れています
本棚に追加
「ブーケも綺麗ね」
横の梨香子先輩が小声で呟いた。
「バラと……あの小さい花は?」
「鈴蘭よ。清楚で素敵ね」
梨香子先輩、あの花好きなんだ。
うっとりと眺める梨香子先輩の横顔を見ながら、鈴蘭の花を頭に叩き込む。
「くっ……しびれるわ……」
と、逆サイドから響く美香先輩の唸り声。
視線を辿ると、美香先輩がうっとりと眺めてるのは花嫁でなく戸川っちだった。
確かにこっち側だと戸川っちの表情がよく見える。
一歩一歩ゆっくりと進む成瀬ちゃんを、戸川っちは体半分後ろに振り向いた形で待ち受ける。
「たまらんわ……あの目」
この場に二人しかいないみたいに、成瀬ちゃんだけを、どこか切ない表情で真剣に見つめていた。
成瀬ちゃんを新郎に託すお父さんに戸川っちが深々と頭を下げると、女子一同から“ほうっ……”とため息が漏れた。
「お辞儀萌えー……」
横から度々聞こえてくる美香先輩の雑音に耐える。
せっかく感動で鼻がツンとしたのに、台無しになった。
最初のコメントを投稿しよう!