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女手一つで開かれた居酒屋。
常連客も抱え、経営はそれなりに順調。早くに離婚し、出戻りした若女将(この表現で合っているのか分からない)が膝を壊した母親から店を引き継いだのは、三十代の頃であったらしい。
それから何年経ったのかは教えてもらえない。
店構えは古くて汚いけれど、中に入ると清潔でどこかホッとするものがある。おばあちゃんの家でコタツに入った時のような安心感。そんな場所で働いている若女将の多恵さんは、年齢を感じさせないくらいに美人で若々しい。
労働で細くなった手首とか、まとめられた髪から覗く首筋とか、そういう目線で見れば成人してから少しだけ歳をとった俺でも普通にそそられる色気がある。
俺の年? 二十八歳ですが何か。
釣り合ってないのは重々承知ですけど、むしろぺーぺーの俺なんかが多恵さんに相手にされるわけなんか絶対にあり得ないんだけど、だからといってそう易々と諦めなんかつくはずもなく。
こうして通って飲んだくれて、色々と相談してもらう権利くらいはあるだろう。気持ちわりいって? そりゃどうも。
若女将の色気にやられて毎晩ちゃんぽん。酒にも強くないのにマイボトルなんか入れちゃって、揚げ物頼んで、二日酔い。そんなことをやっていれば、身体は正直だ。少なくとも、先日の検査にしっかりとイエローカードが提示されてしまった。
ぷるん、と揺れているのは恋人のおっぱいじゃない。生まれたてのプリンでもない。揉んでも揉んでも消えぬのは、どこからどう見ても俺の腹。直視したくないけど贅肉です。……はい。
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