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「せ、先生っ、コレ凄いっすよ!コレ持って件のバイザー製薬に持ってったら…
チンケなオバハンの浮気調査なんて目じゃないです!
…いやあ、さすがは月影先生。誰にもナイショでこんな計画を進めてたなんて。
今回もまたお手柄ですねっ」
「…………」
足早に去る私の後を、興奮した様子でみかる君が追ってくる。
「みかる君」
私は切れかけた街灯の下に立ち止まると、振り返らずに問いかけた。
「私のような男にとっては…金より大切なものがある。
何だか分かるかね?」
「え…」
「ロマンだよ」
“それは君に預ける。いいようにしときたまえ”
そう言い残し、私はその場に立ち尽くすみかる君を置いて、夜の雑踏へと姿を消した。
「……先生」
月影太一。
通称、ハードボイルド探偵。
今宵も紫煙が目に染みる。
(おわり)
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