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しかし、だ。
何一つ憂いのない生活を、夫である社長に保証されながら、それには飽き足らない20も年の離れた若妻の火遊び…
地位、権力、金に女も男もすり寄るのが世の常なれど、その実女は実に強か。夫には面従腹背で、美しい仮面の下で舌を出す。
マッタク、腐った世の中だゼ。
ふうっ。
この世の切なさとともに肺腑から紫煙を吐き出した時、みかる君が声を上げた。
「せ、先生!ホシが妙な動きを始めました」
「みかる君、報告なら静かにやりたまえ。君の声はキンキンと甲高くていけな…」
「服を…脱ぎ始めました」
「替われ」
「ホウ…和服、か」
2センチ四方の小さな穴からは、落ち着いた色の美しい小袖に身を包んだ奥方の後ろ姿が見える。細緻な金糸の刺繍が、裕福な家庭であることを雄弁に語っていた。
女は後ろを向いていて、こちらから顔は見えない。しかし写真で顔は知っている。一見して百合の花のように清楚で、かつ華やかさを兼ね添えたいい女だ。
女はまず、結い上げた髪から簪を外すと、コトリとテーブルに置いた。
それから緩やかな仕草で帯留めを外すと、艶めかしい仕草で帯を解き始める。
私はゴクリと唾を飲んだ。
「先生?…別にコレ、見なくていいんじゃないですか?何つーか…これじゃあまるで覗き見…」
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