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秀美は幼い子供がどんな未来を見ていたのか知らなかったが、
彼女はあどけない一太に少し微笑むと急に真顔になった。
「新しい環境で、
どうか新たな出発が出来ますように……」
秀美にとって一太は大切な宝だった。
夫を亡くしてから母子二人の生活に不安を感じていたけれど、
秀美は静かに手を合わせ後悔のない人生を送りたいと思った。
ところで秀美はある人物とここで出会っていた。
秀美の目は一般の参拝客に映っていたに過ぎないが、
実はこの先何度も出会うことになる。
その意味を一太だけが知っていた。
彼は父親を失った時に運命という重い画像を背負い、
未来へ舵取りをしなければならない宿命を追っていたが、
一太の母は何も知らずこの世で生活し、
前向きに生きようと一心に神社で祈っていた。
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