恋する唇

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「なんかごめんね。下がさ、穿くものなくて、その、そんなんで」 相原はTシャツ姿。 春だし寒くはないだろうけど、申し訳ないことに下は下着一丁だ。 「あ、嫌だよね、ごめんね先輩」 「嫌じゃないよ」 舞い上がっていた私は着替えにまで考えが至ってなかったけど、私のお風呂の間に相原はちゃんとコンビニで下着とシャツを調達してきていた。 「コンビニってこういう時ほんと便利だよね。トランクスまであるし。へへ」 こういう時って、よくあるの? ……いや。 お互いにいい歳だし。 いちいち微妙な失言をあげつらっちゃダメだよね。 「昔コンビニでバイトしてた時、一晩五百円分まで食べていいことになってたんだけど。食べ過ぎて後でばれてよく怒られた。へへ」 それにしても、ベッドに入ってからの相原は普段に増してやたらによく喋る。 「唐揚げとメロンパンとカップラーメン食べたら、もう五百円いっちゃうんだよ」 「それだけ食べれば十分でしょ。よく太らなかったね」 相原は細身の長身、元バスケ部らしい体型だ。 「うん。でも辛いもん、甘いもんって交互に欲しくなるよね」 「あー、分かるかも」 いい歳した男女が一つのベッドで、なんでこんな色気のない会話をしてるんだろう? 私、ミノムシにされてるし。 顔も見られない後ろ向きだし。 もしかして相原、後悔してる?
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