恋する唇

6/13
前へ
/29ページ
次へ
言葉は優しいのに、部屋に入ってから一度も触れてくれない。 私、まだ自信も実感も足りない。 ずっと好きすぎて、片思いが長すぎて、すぐに不安になる。 相原は優しいから、私を気遣って受け入れてくれたのかな、って。 道で好きって言ってくれた時、まるでさっき見た満月みたいに満ち足りてたはずなのに。 「なんで私だけこんなぐるぐる巻きなの?」 「だって……」 相原が目を逸らしたまま口籠もった。 「だって、先輩冷えちゃうから」 「そこまで年増じゃないよ」 もう。 素直に寂しいって言えないの? でも相原はぎゅっと目を瞑って、そんな私を抱き締めた。 「先輩、全然分かってないよ。同じベッドにいるだけでいっぱいいっぱいなんだよ」 布団に顔を埋めて相原が呻いた。
/29ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2127人が本棚に入れています
本棚に追加