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「相原、帰りどうする?」
美香先輩の過激発言のせいか、気まずい空気が漂った。
でも、さすがに泊まるって選択肢はない。
相原君だって男だし。
「大通りでタクシー拾いますよ。梨香子先輩は近所なんですよね」
「うん。歩いて五分ちょっと」
「送っていきます」
「いいよ、近いし。それよりタクシーつかまえないと」
「女の人が一人で夜道歩いちゃ駄目ですよ。送りますから」
梨香子先輩を一人で歩かせるなんて心配で帰れないから、半分は自分のため。
「ありがと……」
少しはにかんだようにぎこちなく笑って、梨香子先輩が頷いた。
「うち、こっちなの。ごめんね」
「全然」
灯りのまばらになった静かな路地を、先輩の横に並んで歩く。
二人が黙ると、靴音以外、辺りは何の音もなく静まり返っている。
考えてみたらこんな夜中に二人で居るのは初めてで、何だか少し緊張した。
しらばくして、梨香子先輩が口を開いた。
「美香と飲みに行くと帰りはこのパターンが多いのよ。さすがに私一人じゃ美香を運べないから迎えに来てもらったりするけどね」
「後藤さん、でしたっけ。いい感じの人ですね。意外だけど」
あれだけフェロモンが何だって騒いでるくせに、全然違うタイプだったし。
「意外でしょ?でも美香って普段はあんなんだけど、あの人の前では結構女の子なのよ」
ふふ、と梨香子先輩が笑った。
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