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「彼、すごくいい人でね。もう美香とは長いのよ」
「美香先輩は何で会社に内緒にしてるんですか?」
「私達、もういい年でしょ?」
夜空を見上げながら梨香子先輩が小さく笑った。
「美香は特に縁故の事務職だから、ばれると居づらくなるのよ」
そういえば前に、縁故組には苦労があるのよって言ってたっけ。
「彼は検事志望でね。司法試験に受かったばかりでまだ大変な時期なの。彼は合格したら結婚って思ってたみたいなんだけど、美香は負担になりたくないって」
後藤さんは養うつもりなのに、美香先輩は勉強に専念して欲しいからって、まだ自立していたいんだそうだ。
「それでも傍で支えたいのよね」
会社にばれないよう、入籍もまだしていないらしい。子供ができたらね、と。
「強がってるけど、本当は我慢してるの。指輪だけ用意してね。いじらしいのよ、美香」
「そっかぁ。指輪で役に立ててよかった」
一生のものだから夢があるのよって不貞腐れてた顔を思い出した。
こっそり指輪を鎖に通して身につけてるし。
女の子って、年齢なんか関係なく、中身はとっても柔らかい。
そういうの可愛いなって思う。
そっと隣を歩く先輩を見た。
梨香子先輩も今、誰かのこと考えてるんだろうか。
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