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きれいな髪と水色の裾がふわふわと揺れるのを見下ろしていると、すごく大事なものを守ってる気分になった。
「……そうだ、先輩」
大事なもの忘れてた。
早く渡して喜んでもらいたかったのに。
立ち止まって、引き出物の袋からゴソゴソとブーケを取り出した。
「……変形しちゃってますけど」
「ありがとう……!」
梨香子先輩の顔がぱっと輝いた。
両手で大切そうに受け取って、胸に抱えてもう一度繰り返した。
「ありがとう……すごく嬉しい」
嬉しそうにそっと花を撫でる先輩を見てると、あの恥ずかしい争奪戦だってもう一回やってもいいぐらいの気分になった。
でも、誇らしい気分のどこかで、胸がチクチクした。
ブーケトスの意味ぐらい知ってるんだ。
受け取った女の子は次に幸せになれる、って。
“私達もういい年でしょ?”
もう幸せになるつもりなんだ?
きっと今の彼氏と。
ブーケを取ったおバカな後輩の男が実は先輩のこと好きでした、なんて先輩にとってはせっかくのブーケが興醒めになるから。
止めていた足を再び踏み出しながらできるだけ明るく言った。
「梨香子先輩も、もうすぐ予定あるんですか?」
高望みはしないよ。
そう言い聞かせる。
「だからブーケがそんなに……」
横に姿がないことに気付いて振り返った。
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