先輩が好きだから

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いつまでも抱き締めてる訳にもいかなくて腕を緩めかけた時、ようやく先輩が小さな声で言った。 「ほんと?」 「下心ですか?」 「違うわよ!」 緩めた腕の中で先輩がこちらに向き直って、濡れた目で見上げてきた。 まだ、腕の中から逃げないでいてくれるから。 目を見て気持ちを告げられるんだから、バッサリふられても満足だと思った。 「好きです、梨香子先輩」 先輩の目からまた涙が零れた。 その表情に胸がぎゅっとなる。 「……ほんと?」 「うん」 「バカ相原」 「うん」 「私も好き」 「え」 ……聞き間違い? 訳がわからず、頭が真っ白になった。 だって先輩、いつも彼氏いた。 俺とは全然違うタイプの。 「あんたより、ずっと前から」 「え」 うそだ。 ずっと前から? ずっと前から……。 頭の中で色々ぐるぐる考えた。 「バカ。相原のバカ。鈍感」 「うん」 「うん、じゃなくて、何か言ってよ!」 怒る梨香子先輩をもう一回抱き締めた。 「好き」 今はこれしか言えないよ。 先輩が胸に顔を埋めてきゅぅっと抱きついてきた。 「好き、先輩」
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