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郊外のゲストハウスのスイートルーム。
都内中心部の高層ホテルの夜景こそ無いものの、部屋の広さも装備も相当なものだ。
ここを見つけて予約するのにも、ほとんどの準備を一人でこなした紗衣が相当苦労してくれたんだなと思う。
「やったー!広ーい!」
当の紗衣は、部屋のドアを開けた瞬間、無邪気に大喜びで駆け込んで行った。
披露宴会場に直結しているため、紗衣はまだドレスのままだ。
細い肩を出したデザインのドレスを纏った彼女は神々しいぐらい綺麗で、今朝控え室で初めて見た時は何も言葉が出てこなかった。
ただ、披露宴でベールを取った彼女の白い肩や胸元に男性陣の目がチラチラと向けられる度、全員蹴散らしたい衝動が込み上げてきて困ったけど。
「疲れたぁ……わぁ、ふかふか」
彼女は無防備にベッドに寝転んではしゃいでいる。
ウェディングドレスでベッドに寝そべる姿って、妙に生々しくてそそられる。
……そうだ。
これは一生に一度のシチュエーションじゃないか。
しかし、にじり寄る俺の邪気でも感じたのか、あと少しというところで彼女はガバッと起き上がった。
「そうだ、バスルーム見て来よう!」
「……」
「わぁー!お風呂ゴージャスだよ、戸川君!」
無邪気にバスルームに走りだしていく彼女に肩透かしを食らった俺は、苦笑いしながら彼女の髪から落ちた花びらを拾いあげた。
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