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梨香ちゃんのマタニティライフは順調に過ぎ、六月に入った。
出産まであと一ヶ月だ。
美香先輩は三月末で退職してしまったけど、週一は必ず顔を見る。
やれお米を頼むだの急に甘いモンが食べたくなっただの、相原君は妊婦二人にアゴでこき使われている。
美香先輩につわりはないらしい。
「つわりになりゃ、少しは静かになるのに」
そうボヤいた後、首を振った。
最強重鎮様が不機嫌になったら手がつけられない。
「今でいいや。うん」
それに比べて成瀬ちゃんはめっちゃくちゃ可愛い妊婦さんだった。
今は過去形だ。
つい先日、成瀬ちゃんは無事に元気な男の子を出産して、とうとうママさんになった。
「相原君のマドンナちゃんが…」
寝室の前を通ると、パソコンでスカイプ通話をしている梨香ちゃんと成瀬ちゃんの会話が聞こえてくる。
だから相原君はさっきから何かと用を作っては廊下をウロウロしているのだ。
「臨月になるとさぁ、腰が痛くて痛くて」
『だよねー。私は夜寝る時、戸川君にマッサージしてもらったよ』
ちょ成瀬ちゃん、また要らんことを。
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