第1章

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 大河は折れ曲がった白い紙と私をチラチラと交互に見た。その目は早く紙を開いてみれと言わんばかりだ。  渋々、私はその紙を開いてみた。  紙には下記のことが、事務的に書いてあった。 ーー辞令ーー 下記の通り1月1日付けを以て移動とする。  そう書かれた下に表があり、対象の人の名前と現在の配属と新たな配属先が書いてあった。数人の名前の中に大河の名前もあった。 「へえー、東京。これって栄転って、言うんじゃないですか?おめでとうございます」  私は特段驚きもせず、そう言った。  しかし大河はその私の様子に慌てていた。 「いや、いや、いや、おかしいでしょう。マナちゃん。何でおめでとうなの?東京だよ。東京!何とも思わないの?」  そう言われても何と思えばいいんだ?  私は大河の話が分かってスッキリしていた。私が思う東京…… 「東京……ん……東京ねぇ。修学旅行で行った羽田空港で芸能人を見たかなぁ」  私がそう言った瞬間、大河は若干キレかかり気味で立ち上がった。 「そうじゃないだろう。これからどうするんだよ……って、話だろう」
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