第1章

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 12月もなかばを迎え数日後にはクリスマスが控えている街にはイルミネーションが競い合うかのように輝いていた。このイルミネーションのベストショットが売りの駅の2階には多くの観光客やカップルがセルフィーを使って写真を撮っていた。  その中を人をかき分け景色も(ろく)に見ないで私(姉川マナ)はひたすら走っていた。  この寒い中、よくも見に行く気になるもんだ。こっちは早く帰りたかったのに。大寒波到来で一刻も早く暖まりたいわ。  それなのに、私は家と真逆の方向に向かって走っていた。ほんの30分くらい前、仕事が終わりスマホを見ると、私からは知り合ってから1年半、付き合うようになって1ヶ月ちょっとの(おに)()(たい)()という男から連絡が入っていた。 「話があるから家に来て」  わざわざ家に行かなくてもそのままLINEで話せばいいのにと思いながら私は返信した。 「何ですか?」 「家で話すから今日来て」  即答の返事を見て何もこんな寒い日じゃなくてもいいのに。と、悪態をつきながらも大河の家まで急いでいた。
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