第1章

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「何をしたの?」  大河は不思議そうな顔で薄まった牛乳を見ていた。 「牛乳が腐っていたら、ウォッカと混ぜると柔らかい豆腐みたいになるんですよ。これは賞味期限は切れてるけどまだ飲めますよ」 「それ、ネットで調べたんだ?」 「ううん。あの料理研究家のまだむチッチの情報。だからかなり怪しいけど」 「ふーん。大丈夫って言われても、ヤッパリ無理だな。賞味期限が切れてたら飲めないな」  じゃ、すぐに捨てればいいのに……  私はその皿と牛乳パックを持ってキッチンへ行って、使ったままの皿やコンビニ等のお弁当のパックが起きっぱなしになったシンクにウォッカで薄まった牛乳を捨てた。  そのシンクの横の僅かなスペースに置いてある私のコーヒーにだけ牛乳をマグカップの縁のギリギリまで入れて、残りを排水溝に流した。 「そう言うところだけサバサバして凄いよな」と、牛乳を捨てる私を見ながら大河は言った。  私と付き合う前はゴミ屋敷同然だったこの部屋に住んで、賞味期限なんて気にしてるあなたの方がスゴいと思うんだけど。  部屋に戻り、牛乳のせいですっかり冷めてしまったコーヒーを1口啜った。帰宅直後だったら冷え切った体にこのコーヒーは罰ゲームにしかならなかったと思うけど…
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